望むときに安心して腎移植を受け、健やかで楽しい人生を取り戻せる未来。

東京女子医科大学病院の腎移植手術、どんな風にするの?

手術室東京女子医科大学病院

ハロー!腎移植レシピエントの肉球アッパー(@hellokidneylife)です。

2017年9月東京女子医科大学病院で夫婦間・先行的生体腎移植手術を受けました

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腎移植手術の種類

親、子、兄弟などの親族、または配偶者から腎臓の提供を受ける「生体腎移植」と、脳死や心臓死になられた方から腎臓の提供を受ける「献腎移植」の2種類があります。

「生体腎移植」の件数は「献腎移植」およそ10倍となっています。

新しい免疫抑制薬の開発や移植医療の進歩により、腎移植の成績は2000年以降、飛躍的に向上しています

移植手術後に患者さんが生存している期間を「生存率」、移植した腎臓が機能している期間を「生着率」と表し、成績の指標としています。

生体腎移植手術とは

親、子、兄弟などの親族、または配偶者から腎臓の提供を受けます。

ドナー(腎臓を提供する人)のどちらか片方の腎臓を摘出し、レシピエント(腎臓をもらう人)の膀胱に近い右側の骨盤の中に移植する手術です。

術後は集中治療室で全身管理を行い、問題がなければ翌日に一般病棟へ移ります。

1日間のベッド上安静を要し、術後2日目より歩行が可能です。

通常4日目に膀胱のチューブ(カテーテル)を、その翌日に傷のチューブ(ドレーン)を抜きます。

夫婦間腎移植

以前は、親子間の移植が主流でしたが、ABO血液型不適合(血液型が異なる)腎移植の成績が大きく向上したこともあり、近年、夫婦間腎移植が増加し、ほぼ同じくらいの実施件数となっています。

先行的腎移植

末期腎不全になると、人工透析か腎移植しか治療法がありません。

人工透析(血液透析や腹膜透析)を経ずに、腎移植をすることを「先行的腎移植」と言います。

近年では、透析を経てから腎移植を行うよりも、透析を経ずに腎移植を行った方が、生存率と生着率が良いことから、生体腎移植の中でも先行的腎移植の割合が増加傾向にあります。

移植腎の生存率および生着率

生体腎移植での生存率は5年98.4%、10年96.9%で、生着率は5年93.7%、10年86.7%です。

献腎移植での生存率は5年98.2%、10年86.9%で、生着率は5年90.2%、10年65.3%です。

1年以内に死亡することは極めて稀なケースです。

移植腎機能廃絶(移植した腎臓の機能が失われること)の原因として多いのは、急性および慢性拒絶反応です

拒絶反応について

約30%の症例で急性拒絶反応が発症しますが、そのほとんど(95%)が治療によって回復します。

拒絶反応の約80%は術後3〜4ヶ月以内に発症するため、この期間は注意が必要です。

通院について

外来通院は、初めの1ヶ月間は週2〜3回程度必要ですが、問題がなければ徐々に頻度を減らしていき、最終的には月1回程度の通院となります。

免疫抑制剤について

移植腎を長期に渡って保つために、腎機能がある限り飲み続けなければなりません。

主にグラセプター、セルセプト、メドロールの3種類です

全身麻酔のとき、何をされるの?

麻酔の前にされること

  • 心電図のためのセンサーを胸の辺りに装着
  • 自動血圧計の装着
  • 脳波モニターの装着
  • 点滴の用意
  • 指にパルスオキシメータを装着(爪の色から呼吸や心肺の状態を見る)
全身麻酔といえば、酸素マスクから出てくる麻酔ガスを吸って意識を失うというイメージがあったのですが、実際のところ腕の点滴から麻酔液を体内に入れるというものでした。

麻酔が効いてからされること

手術直前の処置

  • 肺に酸素を送る管を口から挿入(呼吸が完全に止まるため)
  • 胃管を鼻から挿入(嘔吐を防ぐために胃にチューブを入れておく)
  • 膀胱留置カテーテル(尿量を測るため尿道から膀胱まで管を入れる)
  • 輸血用の管を両手首の血管に挿入
  • 下肢マッサージ機器の装着
  • アンダーヘアの処理

手術直後の処置

  • ドレーンの装着

傷の内部に血液やリンパ液などが溜まりやすくなり感染症のリスクが高まりますので、体外に排出する管を膀胱の右あたりに挿入します

ドナーの手術

ドナーは左の腎臓を摘出します。

全身麻酔下で、体の左側が上になるよう横になる体位をとります。

内視鏡を左の腹、横腹、背中の3ヶ所入れて、モニターに映し出される映像を見ながら、腎臓につながる血管と膀胱につながる尿管を切除します。

腎臓が切り離されて取り出せる状態になってからヘソの下14センチのところを真横に8センチ切開し、網状の器具で腎臓をキャッチして取り出します。

ABO血液型不適合腎移植でしたので、取り出された腎臓は真っ白になるまで洗浄されました。

手術時間は2〜3時間です。

レシピエントの手術

全身麻酔下で脇腹から膀胱のあたりまで約20センチ切開し、右の骨盤の内側(膀胱の斜め上あたり)にドナーの腎臓を移植します(自分の腎臓は2つとも残す)。

ドナーの腎臓は左側ですので、血管や尿管の向きの都合で移植時には前後反転した形で収まります。

腎臓から出る血管(腎動静脈)は、体内の足に行く血管(腸骨動静脈)に、尿管は膀胱に繋ぎます。

通常の手術時間は3〜4時間で、多くの場合手術中に尿が出始めます。

多発性嚢胞腎という難病を発症しており、50センチほどに肥大した右腎の摘出を同時に行ったため、切開部分は30センチとなり、手術時間は6時間かかりました

多発性嚢胞腎:腎臓に嚢胞(体液がたまった袋)がたくさんできて、腎臓の働きが徐々に低下していく遺伝性の病気です。国内の患者数は約30,000人と推定されています。

さいごに

当たり前ですが、全身麻酔をされているあいだは一切の感覚がなくなります。

夢さえ見ませんでしたので、手術はあっという間に終わりました。

全身麻酔から覚めたとき

もう終わったの?

と思ったのを覚えています。

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